ソフトウェアの試用版の問い合わせに見られるパターンと真実
うちの会社はシステム開発の受託と自社でパッケージソフトを開発するというのが主な仕事になっています。
パッケージソフトはデスクトップアプリであったり、サーバーを簡単にインストールしてメンバーと共有できるようなソフトであったりなど、いくつかの種類を販売しています。
雑誌やウェブでよく見かけるようなパッケージソフトというのは数千円から高くても数万円です。たとえば、セキュリティソフトのノートンセキュリティは4,480円、MicrosoftのOffice Home and Businessは約27,000円といった具合です。
個人のレベルで買うなら数万円以内でないと売れない気がしますので、このような価格帯になっているのではないかと思います。
しかし、うちの会社のソフトというのは基本的には業務系のものなので、企業などの組織で使ってもらうことを想定しています。そのため価格は5万円以上もします。いくつかバリエーションがあり、一番高いもので70万近くします。
入社したときは、こんな高いソフト誰が買うんだよ!と思っていたのですが、意外にも結構売れます。安いのに売れないソフトもありますが、高くても売れるものは売れます。
これにはびっくりしました。もしWEBエンジニアにならずに、ごく普通の消費者として過ごしていたら、多分一生知らなかったと思います。
ただ、数千円~数万程度のソフトであればいきなり買っていく人もいるとは思いますが、数十万もするようなソフトをいきなりポンと買っていくような人はあまりいません。いきなり買っていく人というのは、信頼できる人からの口コミを受けて購入するということが多いです。
通常は、お試し版を使って吟味してから製品版を買っていく、という人が多いです。
このときによくあるパターンがあります。
それは、ソフトウェアに不具合やうまく動作しない部分があると、ユーザーからの問い合わせの内容が増えるということです。
少ないやり取りで問題解決しないと、問い合わせをすることに対する敷居が下がる
まず、ソフトウェアがうまく動かない場合、通常はどのように行動するかを考えてみましょう。たとえば、ソフトをダブルクリックして起動したいけど起動してくれない、というパターンの場合、以下のようなステップを踏むことが考えられます。
(1)あれっ、セキュリティソフトが悪いのかな?一旦止めてみてから試してみよう。
(2)うまくいかない。説明書を読んでみよう。
(3)ダメだな。再インストールしてみよう。
(4)やっぱりだめだ。何でだろう?メーカーのホームページに何か書いてあるかな?
(5)ホームページにも書いてないな。ネットで検索してみよう。
(6)うーん、うまく見つけられないな。問い合わせするしかないかな?
(7)メールやホームページから問い合わせを書く。
自分の経験に照らし合わせてみてもよくわかるのですが、最初は自分でいろいろ試行錯誤すると思います。あれかな、これかなと自分で考えて試したり、ネットで検索したり説明書を読んだりして解決を試みます。しかし、それでもうまく動かない場合には、最終的にメーカーに問い合わせをすることになります。
そして、メーカー側で原因を調査して解決法をユーザーに返すという流れになります。
メーカー側に問い合わせが来るということは、その時点でユーザーはいろいろ試行錯誤をやっている可能性が高く、時間も費やしているという状態になっています。ユーザーはややストレスを抱えている可能性が高いです。
問い合わせがきた場合、我々ソフトウェアメーカーの人間として大事なのは、ユーザーの問い合わせに対しては、なるべく少ない回数で解決するようにすることです。できれば1回の返信ですべてを解決したほうが良いです。
もし1回で解決しなければ、同じユーザーによる次の問い合わせまでの時間は非常に短くなります。問題が解決しないから当然ですよね。やり取りの回数が増えるごとにユーザーのストレスと不信感が高まっていくので、なるべく早く解決してあげる必要があります。
そして、我々メーカー側にとって悩ましいのが、やり取りの回数が増えるにしたがって、質問内容も増えていく可能性が高くなるということです。
今回の場合はソフトウェアが起動しないという内容にもかかわらず、「動作確認がとれているセキュリティソフトを教えてください。」、「それと、このような機能は搭載されていますか?」、などなど、本来の問い合わせと関係ないといい切れないけども新たに調べないといけないような質問が来たり、全く関係ない内容も含まれるようになってきます。
上の(1)~(6)のように自分でできることをすべてやった後に問い合わせという壁を通り抜けてやってきているので、問い合わせに対する敷居が大きく下がっています。ちょっと頭の中に浮かんだ疑問もついでに質問しやすい状態になっています。解決までの時間が長くなってしまいますので、メーカー側の負担は増えます。
とはいえ、問い合わせがあるというのは買いたいという前向きなシグナル
普通の人にとってメーカーに問い合わせメールや電話をするというのは、緊張することも多いのでややハードルが高いのではないかと思います。
まぁちょっと使ってみようかというような軽いノリの場合には、少し触ってうまくいかないと使うのをすぐにやめてしまいます。調べることもなく、問い合わせをするまでには至りません。もちろん、購入することもありません。
ところが前向きに購入したいと思っている人にとっては、何とか使いたい、ソフトのことをもっと知りたいと思っている人が多いです。このソフトがあれば、現在抱えている状況を改善できるのではないかと考えているのではないかと思います。うまく動かないことがあってどうしても解決しない場合には、問い合わせをしてこられます。
このようなことが背景にあるので、問い合わせをしてくる方は見込み客だと思って丁寧に対応しています。当たり前のことなのですが・・・。そして、問題が解決し、そのソフトを試用してみて機能が満たされていると感じられた方は、たいていの場合購入していただけています。
ただ、うまく動かないことがあっても問い合わせをしてこないということは、その時点で脱落した可能性が高いです。残念ながら脱落した人がどれくらいいるかということはわからないので、我々エンジニアができることは不具合を限りなくゼロにすること以外にはありません。
脱落する人がほとんどいない状況でソフトを操作してもらい、十分にその機能が良いものかどうかで購入するかどうかを判断してもらう、というのが理想的な流れです。ソフトがうまく動かなかったからやめた、というのは一番避けなければなりません。
不具合ゼロはなかなか難しいですが、我々エンジニアは挑戦し続けなければなりませんね。
購入してくれたということは、そのソフトが便利だと思った、良いなと思ったということですから、我々エンジニアとしては自分が作ったものが認められるというやりがいが感じられる瞬間でもあります。
1本でも多くのソフトウェアを売りたいものです。
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