ブラック研究室の見分け方完全ガイド


私は国立の理系大学院を出て、今はSE兼プログラマーとしてシステムやソフトウェアの開発の仕事をしています。仕事では大学や独立行政法人の研究室の方と仕事をすることも多く、これまで多くの研究室を見てきました。


とても良い研究室だなと思うこともあれば、この研究室はブラックだなと思ったこともあります。大学院と仕事での経験を通じて、研究室がブラックかどうかを見分けられるようなってきましたので、その方法をご紹介したいと思います。



論文が出ているかどうかをチェック


研究者の命は論文の本数だといっても過言ではありません。35歳でファースト・オーサーの論文が1本しかないと不安になりますよね。


入った研究室で論文が出やすいかどうか、というのはとても重要な問題です。中には数年間論文が1報も出ていないというようなところもあります。教授が怠惰なのか、それとも成果が認められにくい環境なのか、いろいろあります。


原因は何にせよ、そのような研究室に入ってしまったら研究者人生としては赤信号が灯ることになってしまいます。


見分け方としては、まず研究室のホームページを確認します。今はたいていどこのラボもホームページを持っています。Publicationや業績のページを確認し、年間何本くらい論文が出ているかを過去数年にわたって確認します。


この時に大事なのがラボの人数です。人数が少なければ論文数は少なくなりますが、気をつけたいのは人数が多いわりに論文が出ていない場合です。たとえば、20人くらいメンバーがいるのに、論文が年間1報くらいしか出ていないような場合は気をつけましょう。論文が出るペースが遅いということは、結果が単に出ていないということもありますが、ラボ内で何らかの問題を抱えている場合も多いです。


また、論文の種類も確認すべき点です。論文は出てるんだけど、レビュー論文や総説がやたら多い。日本の雑誌への投稿がやたら多い。というような場合には、新たな成果が出にくいことが考えられます。




オーバードクターがいないかどうか


ドクターをとろうという学生さんが在籍しているような場合、なるべく博士課程の3年以内に論文をまとめて学位を取ることが普通です。


しかし、研究室によっては学位を期限内にとれず、オーバードクターの学生がたくさんいるところもあります。


このようなラボは教授のプライドが高くて相当な研究成果を要求されることがあったり、研究室のメンバーの数が多くてなかなか論文を出版する順番が回ってこないというような事情があったりします。


いずれにしても、まともな感覚を持った指導教官であれば、学位取得を目指すのを支援してあげようと思うのが通常です。それをせずに、オーバードクターをたくさん生み出している状況を良しとするのですから、研究室としてはとてもやっていきづらいと考えた方が良いです。




研究にすべての時間を捧げないといけないという方針は要注意


何事もそうなのですが、何かで成功しようと思うと自分の持っている時間の多くを集中させることは必要だと思います。


しかし、研究室の指導教官が「時間をすべて研究に捧げるように」、「バイトする時間があるなら研究しろ!」というような考え方の場合、その研究室はブラックである確率が非常に高いです。


往々にして、とりあえず遅くまで研究室に残っていることが正しいという考え方になっていたり、効率を無視した根性論に振り回される可能性があります。


また、ラボの学生や研究員が使い捨ての駒のように扱われる場合もあります。特に学生さんは研究室でがんばっても給料は出ませんので、タダ働きのうまい人員程度にしか見られていないこともあります。




入れ替わりが多い研究室は気をつけろ!


企業でも離職率という言葉があります。一般的に離職率の低い企業は社員の満足度が高く、離職率が高いとその職場はストレスが多くて社員が定着しないと考えられます。


研究室でも同じことがいえますが、研究室の場合は任期付きの研究員の人も多く、任期が来て数年でいなくなってしまう場合も多いです。また、学生さんの場合は卒業と同時にいなくなります。


入れ替わりが多いかどうかはなかなかわかりにくいのですが、任期が来る前に別のところに移ってしまう研究員が多い場合や、学生さんがラボに来なくなるような場合は要注意です。また、秘書さんが頻繁に変わるようなところも注意したほうがいいです。


このあたりはホームページからではなかなか見分けることができません。
可能であればそれとなくラボの人に直接聞いたり、周りの噂を探ってみましょう。




有名研究室でも要注意


ある研究分野でとても有名な研究室というのが存在します。その分野で最先端を行く研究室であったり、数多くの論文を発表し新聞やテレビにも取り上げられるような研究室です。有名な研究室に入れば、成果もいっぱい出て将来が約束されるような感覚を持ちやすいです。


しかし、有名研究室だとしても必ずしもその研究室がいいところかどうかはわかりません。一握りの優秀な研究員が成果を量産しているだけで、その他の人は人知れず泣いて去っていってしまっているかもしれません。


名が知れた研究室というのは、黙っていても人がいっぱい集まってきます。優秀な人もたくさん来ますので、成果はたくさん出る傾向にあります。しかし、一方で陰で泣いている人もいる場合があります。みんなみんなハッピーだとは限らないのです。


その研究室にぴったりマッチすれば一番いいのですが、必ずしもそうとは限りません。有名研究室だから安全だろうと思って下調べをしないのではなく、事前の情報収集が欠かせません。



内部の人の陰口が多いところはやめておく


私はSE兼プログラマーとして大学や独法の研究室に1週間に1~2回程度出向いて1日作業をする、ということをこれまで何度もしたことがあります。


当然、研究室の人と一緒に仕事をしたり食事をとることになります。楽しいお話や役に立つお話を聞くこともたくさんあるのですが、中にはその場にいない人の陰口や噂話が多いというようなラボもありました。


表面上は仲良くやっているようなのですが、やはり話を聞いていると感じの良いものではありません。自分のことも同じように陰口をたたかれているのかと思うと、嫌な気持ちになります。


当然、それらの研究室ではメンバー間の協力体制というのはあまり良いものではありませんでした。


メンバーの人たちがどのような人たちかというのは入ってみないとわからない部分も多くあります。入社して初めてその会社があうかあわないかがわかるのと同様です。


研究室のスタッフの様子を探る一番いい方法は、個々のメンバーと直接お話をしたり、一緒に食事に行くということです。大学の場合には学食に一緒にお昼を食べに行くという機会を設けてくれるところもあります。見学に行く場合にはなるべく午前中に伺って、お昼もご一緒させていただくと、なかなか見ることができない内部の様子を知ることができます




教授のキャラクターを見抜く


企業でいうなら教授は社長です。社長の方針によって企業の利益が変わることは容易に想像できると思います。優れた経営者であれば売り上げは上がって社員は満足し、ダメな経営者の下では売り上げも給料も下がります。


それと同じことが研究室でも言えます。ラボの運営は教授の方針が色濃く反映されます。


なんとなく押しの強い教授だな、傲慢な感じが透けて見える、と感じる場合には相性が悪いかもしれません。研究室に入ってから精神的にも肉体的にもストレスを抱えることになるかもしれません。


教授のキャラクターを見抜き、自分との相性を考え、ラボに入った時にうまくやっていけるかどうかを判断することが大事です。


そのためには、まずは一度見学をさせてもらったり、お話を直接聞かせてもらうなど、ラボの指導教官に直接会う時間を持つことが大事です。




実際にラボを訪問してお話を聞くことがとても大事


以上解説してきたものについて、ネット上で判断できるものもあればそうでないものもあります。


ネット上で判断できないものについては、やはり実際にその研究室に足を運んで雰囲気を確かめるしかありません。特にラボを運営する教授のキャラクターやメンバーの様子というのはなかなかつかめません。


実際に訪問して自分の目で確認するのがブラック研究室を避けて自分に合う研究室を見つける一番の方法です。




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